溺愛プリンス


誕生日なんて、ずっとしていない。


スマホのスケジュール表を開く。
6月20日に『お父さん』の文字。

それだけ確認すると、そのままテーブルにスマホを置いた。




――……4年前の6月20日。



あの日は朝から浮かれていた。
16歳の誕生日だった。

毎年恒例となっていた家族で過ごす誕生日。
その日も、お父さんとお母さんはあたしの為にサプライズを考えていてくれたはず。

だけど、あたしには高校に入ってすぐに出来た大好きだった彼氏がいて。


彼と一緒にいたいと、思っていたんだ。


“誕生日”という特別な日を彼氏と。


手作りのお弁当持って、遊園地に行って。
夜はちょっぴりオシャレなレストランに行って。
それから、それから……。


誰もがきっとそうしたいと一度は願うはず。


あたしもそうだった。


だから、あの日嬉しそうに誕生日の予定を話す父の言葉を遮って家を飛び出してしまった。





……それが、あたしがお父さんと交わした
最後の言葉になるなんて思いもしないで……。




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