溺愛プリンス


まるで見世物だな……。


ハロルド王子とちょっと話しただけでこんなになるなんて……。
常に注目されてる張本人は、大変だろうな。



……、ま、噂話もすぐに消えるよね。

だって、きっともう関わることなんてな……、






「おお、志穂! お前、今日予定ある?」


「は?」




目の前には、関わりたくないと思っていた昔の幼馴染。

蜂蜜色の明るい髪を、無造作に遊ばせて、ヒロ兄はあたしの顔を覗き込んだ。




「だーかーらー、今日暇かって聞いてんの!」




にんまりと笑いながら、机に向かっていたあたしの手からペンを取り上げながらさらに顔を寄せる。




よ、予定……?
別に、ないけど……。


だけど無性に腹が立って、ヒロ兄の手からペンを奪い取ろうと手を伸ばした。





「……鮫島さんには関係ありません……」


「あー、なんだよその他人行儀な言い方」



だけど、ヒロ兄はあたしのその手をいとも簡単にかわす。




「ちょっと、ペン返してよ」


「ヒロ兄って呼べって! 昔みたいに」


「…………」




意地悪な笑みを浮かべたヒロ兄は、あたしのむくれた頬をそのペンでツンとつついた。



絶対に呼ばない!

そう自分自身に誓いながら、あたしはヒロ兄をジロっと睨んだ。




だから……ヒロ兄は自分の立場わかってない。
なんの気まぐれであたしみたいなのに声をかけてるのかは知らないけど。

その気まぐれのせいで、あたしの人生をかき乱さないで欲しい。



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