ひとりぼっち

｢咲？｣


星奈の声も無視して咲は歩く。


｢な、なによ！｣


咲は泣き崩れている凛の前で止まると持っていた灯油をバシャリとかけた。

｢きゃ、きゃ、なな何するのよ…っ？｣


｢あたし、あんたのこと大嫌いなの｣


咲が無表情にそう告げる。

辺りがシン…と静かになった。



｢な…何言ってるのよ？あたし達…友達…じゃん？｣

｢友達？｣

嘲笑うかのように笑う咲に凛は後ずさりする。


｢友達なんて思ったことなんかないよ。
凛だってあたしのこと友達だって思ったことないでしょ？
凛はあたしのこと利用してただけ。
ほらあたしって頭と家柄だけはいいじゃん？
だから凛はあたしの頭を利用したりあたしの経済力を利用してただけ。違う？｣

｢ち、…違うよ！お願いやめて！やだ！あたし死にたくない！やだ死にたくない！｣

雷斗が凛に駆け寄り、咲を見上げる。

｢咲！お前何考えてるんだよ？！俺ら友達だろ？！殺しあいなんて…出来るわけー｣

｢じゃああんたが凛の変わりに死ぬ？｣

｢え？｣

｢死ぬの？｣

咲の問いに口を閉ざしたままの雷斗に凛が縋り付く。

｢死んでよ！ねぇ！あたしの為に死んでよ！！｣

｢凛…｣

｢あたしまだ死にたくない…よぉ！だから…｣

星奈は咲から残りの灯油を奪い凛の顔にかけると冷たくいい放った。

｢もうグタグタうるさいわねぇ。元はと言えば詩織のイジメの主犯は凛、あんたなのよ？こうなったのも全部凛のせい。だから…死んでよ。あら化粧が取れちゃって誰だかわかんないわねぇ｣

｢咲、ライター貸せ｣

｢ん｣

｢お、お前らおかしいよっ！｣

｢こんな状況じゃおかしくなったって不思議じゃないわ｣



｢んじゃ、凛。ばいばい｣



｢いやあああああああああああああああああ！｣

圭が放ったライターから火が燃えだした。