老人ホームと女子高生
老人ホーム「ひぐらし」
「はぁ?!そこって駅から遠いじゃん?ちょっ!」

ちっ、切られた。

私、青井ひなた。16才。これといった特技もない高校1年。

日曜日だし、家でダラダラしていようと思っていたのに…母親からの電話で予定変更を余儀なくされた。

そう、介護施設でケアマネージャーをする母親の忘れ物を至急届けろ命令が出たのは…30分前。

そして、目的地の最寄り駅までは無事到着。

ここから徒歩30分かかろう道のりを歩けと?

母親へ電話でタクシー使っていいかと聞いたら「歩け」と一言で切られた今。

至急届けろと言っておいて、歩けは…ありえないだろぅ?


ブツブツと文句を言いつつも、歩き出す。

しかし…忘れ物のこの荷物は何?


母親愛用のボストンバッグがパンパンになっている。重さはさほどではないが…女子高生が持つにはセンス最悪で恥ずかしい。


「ママのやつ!絶対あとで見てろぉ~」



「あ、いたいた。ひなたちゃん!」

突然呼ばれた方を見る。

「南さん?」

「良かった!ひなたちゃん見つかって~。悠希さんに怒られるとこだったよ~」

南さん。母の会社の上司。のハズなんだけど…何故か母に頭が上がらないらしい。

「迎えに来てくれたんですかぁ?」

「ああ。悠希さんが車運転しようとしてたから、声かけたら代われと言われてね~。」

「そうなんですか。なんか…すいません。」

「いいんだよぉ。実際、手が一番空いてるの俺だったし、女子高生とドライブなんて嬉しいじゃない?」


南さんは笑って話す。

介護の仕事してる人に多い。

なんだか、いつも笑っている人。


笑顔を仮面にしてるみたいで、私は苦手だ。


確かに話しやすくはあるけれど。


なんか…読めないから苦手だ。
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