老人ホームと女子高生

要介護4 矢沢さん

母のボストンバッグの中身は衣装類だったことは判明した。

スタッフルームから次々と変装した?スタッフが出て来ては、テンション高く高齢者に話しかけている。

次はどんなのが出るのかと、出待ちするお婆ちゃんたちもいる。



「あら~、青井さんは魔女なのぉ?」


しゃがれた老婆の声に反応し、そちらを見る。


全身黒いワンピースに長めのマント。頭に三角帽…そして、編み棒を改造しただけのステッキを持って母親が現れた。



よく年齢不詳と言われるが…確かに若く見える。



ジーッと見ていた娘に気付き、魔女が近づいて来た。



老人たちに囲まれて、ワケ分からない奴にイヤミ言われて、イライラしていた私を悟ったのか


「あら?お嬢さん。折角だから楽しんでみたらいかがかしら?仕事は楽しんだ者が得をするものよ?」


「うっさいな~、今イライラなの!もう帰りたいくらい。」


「ひなたちゃんね~さっき、森本君とやっちゃってね~」


老人たちが魔女に教える


「やってないよ!てか、一方的に言われたの!」


「そう。」


魔女はただニコリと笑うと、老人たちを連れて行ってしまった。




一人残され、ため息をつく。


「もっと飲むかい?」


さっき、お茶をくれたお婆ちゃんが横に居て驚いた。


まだ、ニコニコとジーッと見つめてくる。


「ううん。もうお腹いっぱいだから、大丈夫だよ。」


お婆ちゃんは相変わらず、こちらの言葉には返事一つせず、ただニコニコしていた。
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