てん ―The pure story―
命の恩人はニューハーフ




「ベティママっ、遅れてごめんなさいっ」




駅前のスナック〔エリザベスの小部屋〕に飛び込んだ奈央は、開口一番そう言って頭を下げた。




壁にはエリザベス・テーラーの写真が所狭しと貼られている。




ママは彼女の大ファンで自分のこともベティママと呼ばせていた。




「いいのよ、今日は金曜日だというのに閑古鳥よ。このままだとお茶ひきそう・・・あら、今日すばるちゃんは?」




「てがるのおじさんとおばさんが預かってくれてるの」




「まぁ、それは奇跡だわっ。奈央とカオリちゃん以外には近づこうともしなかったのに。そう、あのご夫婦なら安心ねっ。しかし不思議ねぇ」




ママは頬杖をついて、目を丸くした。




< 100 / 200 >

この作品をシェア

pagetop