リングは彼女に
 馬鹿馬鹿しいじゃないか、苦労して働いて手に入れた大事な金を、そんな事に使うなんて、結局は何にも残らない。

 ただ一時の満足があるだけで、数万円もかかるなんて、馬鹿らしい。

 俺ならそんなことには使わない。

 そんな事に使う余分な金があるなら、絶対にかたちとして残るものに使いたい。

 かたちとして残らないとしても、こう、旅行やデートをするときに使うのが理想だ。


 その方が絶対に有意義だと思うのだが……俺の考えは凝り固まっているのだろうか?


 いや、そんな事はない、間違っていないはずだ。

 それにしても、こんなところまで来てしまうなんて、どうしたものかな。


 長い時間歩いたせいか、足がだるくなってきている。ひとまず休憩を取ろうと思い、どこか店に入ろうと考えた。


 注意深く周囲のネオン看板を眺めながら、しばらく歩いていくと、一店のバーを見つけた。


 『アンシャンテ』という名前の店だ。


 なんとなく、名前の響きが気に入ったので、そこで休むことに決めた。
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