A線上の二人
6



 とにかく、経緯はどうあれ結婚式も恙無く無事に済んだ私達。

 普通なら甘い空間が漂うはずなのに……。

 こればかりはハッキリさせようと彼を睨む。

「普通、酔っ払ったら介抱するわよね」

 それを、事もあろうに抱いちゃうってのは、男性としては最低の部類じゃなかろうか?

 そんな疑問をぶつけたけれど、

「据え膳だったから」

 淡々と言われて、ある意味では納得した。

 確かに、達哉くんも男だもの。

 その男性を前にして、酔っ払った女なんて据え膳以外の何者でもないかもしれない。

 私も軽率だった……

「……いや、でもね?」

 そういう問題なの?

「……もう待つのも、我慢するのも、黙っているのも嫌だったからね」

 そう言いながら、私の座っているソファーのひじ掛けに腰を下ろして、どこか自信満々に腕を組む。

「…………」

「…………」

「待ってたの?」

 首を傾げて見せると、何故か黙ったまま彼は私の髪に触れて、指に絡ませて弄び、

「……音楽をかけよう」

 ハッキリと話題を変えてきた。


 それ以上は言いたくないらしい。


「達哉くんて……言いたくない事と、言いたい事とがハッキリしてるわよね」

「うん」

「…………」

 何を流すか知らないけれど、オーディオに向かって行く彼をまた睨む。

「BGMかけても、この問題は流さないわよ」

「嫌だった?」

 CDを探しながら、振り返りもしない彼。

 まぁ、私も甘い言葉を期待していた訳じゃないけれど、

「少しくらい言え」

 小さく文句を言うと、微かに笑って、彼は振り返った。

「じゃあ、千夜も言ってよ」

「え……」

「僕も実感したいな」

 何をだろうか。

「僕の事をどう思う?」

「…………」

 そんな言葉が達哉くんから出て来るとは、思ってもみなかった。

 何だろうか。

 それこそよくある恋愛小説並に〝好きよ〟だとか、〝愛しているわ〟とか、言わないといけないんだろうか。

< 30 / 32 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop