God of Death

 ーー行ってしまった。

 公園に一人だけ残されたアイトは、呆然と立ち尽くす。そして、小さくなってゆく歩夢の背中を静かに見送った。
 歩夢の姿が見えなくなった瞬間、アイトの左手首のブレスレットが再び黒の光を放ち、鎌の姿に戻った。

『おい、アイト。あんなことをして何になる』
 鎌は少し強めに言ったが、本気で怒ってはいない。
「いや……生きてるって素晴らしさを教えようと思って……」
『だから。教えてやったとして、それが何になる。アイツはもう直き死ぬんだぞ? お前の手によって……』
「分かってる」
 アイトは切り捨てる様にそう言った。鎌には、アイトがまるで何も分かっていないことに気付いているが、深追いはしない。
『斬りに行くか?』
 鎌が尋ねると、アイトは黙って頷いた。

 地を思い切り蹴り、宙へ飛ぶ。すぐに、標的である歩夢を発見した。
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