Love Water―大人の味―




「20時に駅前で待ち合わせ」



「………はい?」



背後から響く声にくるりと振り返る。



イスに座っていた部長は、すっと立ち上がるとそのままあたしの前に立った。



さっきとは違い、視線を上に上げて彼を見つめる。



「上司命令。20時までに駅前に来い」



「………っ」



彼が少し身を屈めて耳元で呟くから、ぞくりと震えがはしる。



みるみる熱くなる顔。



返事をしないでいるのを了解と受け取ったのか、桐生部長は満足げに微笑むとそのままあたしの隣を通り過ぎて行った。



パタン……と閉まる会議室のドア。



同時に抜ける力。



「……、やっぱり……」



資料を渡すだけではなかった、と思うとさらに顔は熱くなるのだった。





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