苦い舌と甘い指先
「おい、ミツ」
何の話だ、と言いかけて口を噤む。
ミツが今まで肥後が立って居た場所を睨みつけていたからだ。
「アイツだけには…!!」
「ミツ?」
まただ。
また何を言っているか分からない。
けど、その瞳の奥に宿る炎が、これから先の波乱を暗示している様に思えて仕方がなかった。
「アイツだけには…渡さねぇ……!!!」
混乱するあたしだけが、この状況について行けなくて
ぎりり と歯が強く擦れ合う音が、静かな部屋に虚しく響いていた------。