kiss me PRINCE!!
kiss me PRINCE!!

その日の夜、あたしの部屋には当たり前のようにヒロがいた。

いつもと同じ光景だ。

付き合いはじめたと言っても、傍からはなにも変わっていないように見えると思う。

たぶん、変わったのはあたしたちの心の中。


そう、心の中は変わったはずなのだ。

あたしはさっきからずっと迷っていた。

もうひとつだけ、あたしはヒロに訊きたいことがある。

ただしそれを言うのは、告白並みに勇気がいるうえに、恥ずかしさに打ち勝たなきゃいけない。


今日だけだ、チャンスは。

ほんのわずかに素直になれたあたしも、明日にはきっと元に戻っているだろうから。

女は度胸よ、沙世!



「ね、ねえ・・・」

「んー?」


漫画を読みながら適当に返事をするヒロの方は決して見ずに、あたしは言った。



「あたしは、その・・・・ヒロの、特別じゃないの?」


よく言ったよ!

どこからともなく拍手が聞こえた気がした。


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