ヌードなアタシ
心残り

雲ひとつ無い、吸い込まれそうな青い空。

昼休み校庭。
芝生に寝ころぶ卓己くんの横で
アタシは空を仰ぐ。


『署名集まったみたいだぜ』


卓己くんは仰向けの姿勢のまま
空を眺めてアタシに言った。


『うん。クラスのコから聞いた。
生徒会も巻き込んで校長室に談判だって…
あんまり大事になっちゃって
当の本人は、びびってます』


『みんな、桜木のこと応援してんだよ。
あ、雑誌に載ったんだって?
今朝、ウチのクラスの女子が
雑誌持ってきて騒いでたぜ』


『…うん、取材。
TVのチカラってすごいね。
予想以上の反応で事務所もあたふたしてる』


そっか、と言って起き上がった卓己くんは
その場であぐらをかいて腕を組んだ。


『奈緒…どうしてた?』


『ん…普通かな。
朝、すれ違う時におはよって
小さい声で挨拶してきた。
アタシも、おはよって返した。
それだけ』


『わっかんねぇよな…オンナって。
写真バラまいて混乱させようとしてたヤツが
今朝は署名活動に気合い入れてんだぜ…
あいつ、何考えてんだか』


ぶっきらぼうな『おはよう』だった。

でも、すれ違い様の奈緒の表情には
これまでのような冷たいよそよそしさは
感じられなかった。


『署名してくれたんだ…』


奈緒の笑い声が聞こえた気がした。

ここで、3人でお弁当を食べてた
あの頃の、にぎやかな笑い声を思い出した。
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