ヌードなアタシ

8時…から5分過ぎた。

マンションのエントランスの前で
大介さんを待っていた。


4月も半ばだけど
夜になると結構肌寒い。

ロングカーディガンを
体に巻き付けるようにして
両手を胸の前で交差させた。



1台のタクシーが
目の前でウインカーをあげ停まった。

後部座席は暗くて見えないけど…
アタシは歩み寄る。


後部座席のドアが開き大介さんが手招きする。

助手席に、もう一人…
瞬くんが乗っていた。



『おまたせ。
悪い、悪い、寒かったか?』


『大丈夫です…』


車に乗り込む時、瞬くんと目があった。


『あ…こんばんわ。
この間は、送ってくれてありがとう』


瞬くんはニコッと笑う。



『今日は両手に花で
贅沢なデートタイムの予定だったんだけど
邪魔が入っちまった…』

大介さんが瞬くんを指さす。



『こまちちゃんも来るって聞いたし、

貧乏な仕送り学生なもんで…
旨いモンに飢えてるんだ。

兄さんは、なかなかオレを
食事にさそってくれないしね』


『何が悲しくて、
野郎二人で飯食わなきゃいけねぇんだ…
かわいいこまちちゃんと食べるに
決まってっだろ』




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