パラワー『天才・原口龍太郎博士のエトセトラ』
天才・原口龍太郎博士の

『愚痴三昧』







それは満月が煌々と輝いている、或る晴れた夜のことだった。


「なぁ、なんでバイオ・インフォマティクス棟の奴らがこっちの食堂に溢れてやがるんだ? あそこには出来立てホヤホヤのレストランが有るだろうに、フンッ」


そう悪態をつきながらグラスの水割りを飲み干したのは、この物語の主人公『原口龍太郎(38)』である。

彼は何かの話題で盛り上がっているそのテーブルをちらっと見やって続けた。


「もうヒトゲノムの解析も終わったんだから、奴らの出番は無いってんだよ。エヴァンゲリ○ンでも造ろうってんなら別だがな。そうだろう! フンッ」


差し向かいで愛想笑いを浮かべながらオレンジ色の髪に手をやっているのは『加瀬純一郎(30)』だ。

しかし彼はバイオ・インフォマティクス棟のその集まりに興味津々らしい。

──────────────…‥・ ・

※バイオ・インフォマティクス
  生物情報科学

ゲノム(生体固有の遺伝情報)解析や、遺伝子配列に依って生成されるたんぱく質の発現予測、進化の予測等を行う学問。


※ヒトゲノム

人間の遺伝情報


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