屍の孤島
平日の午後。

三十名ほど乗船可能な連絡船も、乗客はまばらだ。

小野寺の他に乗っていたのは、スーツ姿の二十代くらいのサラリーマン、制服姿の女子高生、黒いジャケットの男性、旅行鞄を持った小柄な若い女性、ヘッドホンから音洩れするほどの大音量で音楽を聴いている茶髪の若い女。

とりわけ派手なプリントシャツにホットパンツ、都会的なメイクの茶髪の女は船内でも目立った。

その派手な服装や音洩れするヘッドホンだけでなく、男なら思わず振り返るようなモデル並のルックスなのだ。

彼女の名は桜庭 梨紅(さくらばりく)。

ルックスがいいのは当然だ。

今でこそフリーターだが、十年ほど前には天才子役として連続ドラマに出演していた。

子供とは思えないほどの演技派で、雑誌やテレビで引っ張りだこの活躍を見せていたのだ。

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