屍の孤島
地元の人間ではないが、夕映は他の仲間達より島に土地勘があった。

何度も祖母の見舞いに訪れた陰島。

それだけに病院に向かうまでの道程ならば、たとえ真夜中の暗がりの中でも確実に辿り着ける。

近道も知っているし、人に出くわしにくい道も把握していた。

それが彼女の生存率をある程度高めてはいたものの。

「!」

小走りに進んでいた夕映の前方から、摺り足の音が近づいてくる。

小首を傾げ、体を傾け、不安定な体勢で歩いてくる人影。

着衣にも口元にも、ベッタリと血糊をつけた男が、ノソリノソリと歩み寄ってくる。

誰が見ても常軌を逸した姿。

しかしこの島では、既にそれが普通。

彼らゾンビこそが、この島での主導権を握っているのだ。

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