屍の孤島
あの生き残りの連中はどうなったんだろうな。

ふとそんな事を思いながら、鏑木は島の沿岸、海沿いを歩いていた。

こんな海に囲まれた島なのに、港以外には不思議と船は見当たらなかった。

船ならば何でもいいと思っていたのだが、外海は思いの他に波が荒くなり、先程からポツポツと雨も降り出している。

近いうちに大雨と共に海は時化始めるかも知れない。

そうなると小船では転覆の可能性もあり、それが余計に船のチョイスを難しくさせていた。

グロックのリリースボタンを押し、マガジン(弾倉)を取り出す。

そしてジャケットの内側に入れていた新しいマガジンをリロード(再装填)。

…この島を訪れる際、鏑木は虫の知らせなのか、いつもよりも多めに予備の弾薬を持っていく事にした。

何か根拠があった訳ではない。

ただの勘。

普段仕事はスマートに、無駄弾を撃つ事なく迅速且つ確実にこなす。

確実に一発で相手が痛みを感じる間もなく仕留める。

それが生業…『殺し屋』としての鏑木のポリシーだったし、それ故に多くの弾丸を持つ必要もなかったのだが。

結果としてその勘が、いい方向に転がっていた。

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