1ページ。
かわるもの、かわらないもの。
『必ず迎えにくる』

そんなクサい台詞をホントに言おうとしてたんだ。


ただ、ホームは人が多くてそんなこと言えそうにもなかった。

ほら、近くで子供が泣き出した。


こんな調子じゃ言えないって。



電車がホームに入ってきた。

また騒音。



でも言わないと。


ここしかない、というタイミング。

黙っていた彼女が先に口を開いた。



「ありがとう」






なぁ、なんで、『ありがとう』なんだよ?



そんなこと言われたら、何も言えないだろ。



俺は笑って、うなずいて、電車に乗る。


ベルが鳴り響く、小さく手を振る。




ありがとうがさよならに聞こえた日。



忌々しく思っていた小さな街の灯が、何故だか優しく見えた。



いつか帰る日にも、変わらずにいて欲しいと願った。
< 4 / 13 >

この作品をシェア

pagetop