妖精なアイツ【完全版】
その後、妖精から目を逸らさず言う。



「お前……規子の事が好きなんだろ?」


その瞬間、妖精は固まってしまった。


染五郎さんは…知ってたんだ…。


「はじめは『あ、好きなのかな?』って思う程度で…勘違いかもしれないとも思ったし、お前何も言わないから気付かない振りしてたんだ。でも、この前の文化祭…、屋上で、美希ちゃんと話してるのを聞いてしまったんだ。それで、『本気なんだ』っていう気持ちと実感で…俺、お前に本当に酷い事してた…って思ったんだ。」



染五郎さんは、本当に辛そうな顔をしていた。


妖精はただ、何も言わずに真剣に話を聞いていた。


「だから、規子に言ったんだ。『俺たち、距離をおこう』って―…」


それから、染五郎さんは黙ってしまった。
< 96 / 152 >

この作品をシェア

pagetop