終わりなき想いの果てに
「おまえの名は?」


悪魔らしき、男が尋ねた。

「………」

それでも、わたしの張り付いた喉に声は戻らず、ただ床に手を付いたまま、視線を美しい異形の男に合わせていた。

「言葉も出せぬか」

フッと、唇の端を上げて笑いながら、それまで宙に浮かせていた足を床に降ろし、わたしのすぐ側に歩み寄る。

「おまえは、計らずともわたしを世に解き放つ手助けをしたのだ。愚かな人間の女よ。これから何が起きても、おまえはすべてを見届けなくてはならない」

男は、不敵に笑う。

わたしは震えながら、ただ男の言葉を聞いていた。

「我が名はディガル。闇の力を操りし者」

ディガルと名乗った男は、徐にわたしの額に触れた。

「嫌っ!」

今になってやっと、掠れた声が空気を震わせた。

「セーラ…」

「…え?」

―― どうしてわたしの名前を?

すぐに手を離したディガルは、わたしの名を綺麗な発音で呼んだ。

否。

呟いたのか?

わたしを真っ直ぐに見つめる瞳は、わたしを通して、別の何かを見ているようでもあった。



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