P.S.私は幸せです
「中野さん、ごめんね。いつも待たせて」


「あーいえいえ。二人が幸せそうでなによりです」


やっと帰れるわー、といいながら上着を羽織って鞄を形にかける。


「じゃあね。高松さんもさようなら」


頭をぺこりと下げてカフェを去っていく。


「じゃあまた明日ねー!」
「ばいばい」


繭が帰り、やっと二人っきりだ。


ゴミ箱に飲み干したカップを捨て、カフェを出て歩き出す。


もちろん、手は自然に繋げるようになった。


「美菜子さ、毎週毎週中野さんを連れまわしてちゃ悪いよー」


「わかってるんだけどね。繭だけなんだよ、優真とのノロケ話を聞いてくれる人」


そう私が平然というのとは裏腹に、優真の顔は赤くなる。


優真は私に見えないよう顔を背けたつもりのようだが、見え見えだった。


「・・・ーそれ反則」


そう小さく呟いたのが聞こえた。


反則ってまさかーーー?


どういう意味なのかわかってしまい、言った本人の私も恥ずかしくなってくる。


しばらくの間、恥ずかしさからか照れ隠しからか沈黙が続いた。


沈黙といっても悪い沈黙ではない。


手と手で結ばれた絆が成せる沈黙。


ぎゅっと小さな力を込めながら。




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