黄昏色に、さようなら。

純ちゃんと二人、


「行ってきまーす」


と元気に玄関を出れば、そこにあるのは、いつもと変わらない朝の風景。


閑静な住宅街を抜けて、最寄りのバス停まで徒歩十五分。


かっちりスーツの眼鏡のサラリーマン氏にぽっちゃりえくぼのOLさん、


小型犬のマルチーズと散歩中のおじいさん。


通り過ぎる、見慣れた町並みと見知った人たち。


違うのは、実に気分よさそうに鼻歌交じりで半歩前をのんびりと歩く、幼なじみだけ。


チラリと盗み見たその横顔には、親戚で不幸があったばかりとは思えないほど明るい表情が浮かんでいる。


大分秋めいてきた淡いブルーの空を背景に、くっきり浮かび上がるオレンジの髪に、どうしても目が行ってしまう。


すれ違う人たちが皆一様にギョッと目を見張り、『触らぬ神に祟りなし』とばかりに視線をすうっと外していることを意に介する風もない。


これから待っているはずの、大難関をどうするつもりなんだろう?


通学路ではギョッとされるだけで済むけど、学校に入ったらそうはいかない。


そもそも、学校に入れるか、とっても怪しい。

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