黄昏色に、さようなら。

「ああ、まだ君は知らなかったんだね。

加瀬君には私の研究の助手をして貰っているんだが、彼は、優秀な医師でもあるんだよ。

特にリハビリ関係には強いから、安心して任せると良いよ」


「はい!?」


なんで中学生が、研究助手でお医者様っ!?


瀕死の錦鯉のように、口をあんぐりと開けたまま固まっている私に、博士が説明してくれと所によると、


基本的に同じような世界のパラレルワールドでも、まったく同じわけじゃなく少しずつ違うみたいで、この世界は私の居た世界よりも医療技術とESPの開発が進んだ世界。


ESP(イーエスピー)と言うのは、超能力のことで、ESPを使う人をESPER(エスパー)と呼ぶ。


『少しずつ違う』部分には、人の年齢も含まれていて、なんとこの世界の純ちゃんは今十八歳!


道理で、若干、視線の位置が上だと思った。


ここの世界では、十歳で私の居た世界の大学程度までの義務教育が終わり、その後、本人の希望及び適性に合わせて職業に就くのだそうで、


純ちゃんは、十二歳で医師免許を取得後、免許取得の際に書いた論文が認められ、是非にと乞われてこの国営の研究所にやってきた有望株。


おまけに、この世界で五人しかいない貴重なESP特Aというランクの能力者なので、『SA特別国家公務員』と言うかなり凄い肩書を持っているのだとか。


つまり、国きってのエスパーで若手のホープ、期待の星!


それが、ここの加瀬純一郎。


じ、冗談でしょ?


なんなの、このスーパーマンぶりはっ!?


もう、呆然とするしかない。


「ああ、俺の事は、加瀬先生って呼んでくれていいから、望月風花さん」


ニンマリと、悪魔がほくそ笑んでいる。


これを悪夢と言わず、何と言うのか。

< 61 / 100 >

この作品をシェア

pagetop