-Judge-

広い建物を走り回っている内にゼンの姿が見えなくなった。
しかし心配などという気持ちは一切ない。ナンバーである彼がそんな簡単にやられるわけがないし、そもそも地位が上のゼンに私が何か言える立場でもない。

風の音を聞きながら長い廊下を走り抜けていたその時、ふと気になる部屋を見つけた。他とは違う何かを感じて、その扉の前に立つ。
隙間から出てくる冷気と、異臭。何か腐ったような、そんな臭いに戸惑う事なく扉を開けた。






部屋の奥に並べられている鉄格子の小さな檻。その中には腐った動物の遺体。こぽこぽと試験管の中で泡立っているのは紫色の液体。天井から吊された臓器から滴り落ちる血液。
カーテンが閉められた薄暗い部屋は、余計にその不気味さを増させていた。

研究室の様なその場所に足を一歩踏み入れた瞬間に、びーびーっと警報が鳴る。
けれど、大体は予想済みだったために躊躇する事なく足を進める。


「立入禁止ですよ。」

部屋の奥から聞こえてきた声に、けれど、それも予想済みだった。その方向に向かって持っていた銃を構えると、声の主が息を呑むのが分かった。



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