-Judge-

「帰りますよ。」

刀夜さんの言葉に我に返って立ち上がると、小さなミツがこっちを見て首を傾げた。

「またきてくれる?」

そのきらきらとした瞳に、 思わず目を逸らした。

「うん、くるよ。」

思わず黙り込んでしまった私の変わりに、刀夜さんが答える。
ミツは不思議そうに目をしばたたせていたけれど、「待ってるね、レイ。」そう言って、手を振って行ってしまった。


「どうしたのですか、レイ。」

分かっているくせに、そう尋ねてくる刀夜さんに苛立つ。

「…別に。」

ぶっきらぼうにそう答えて、それでも内心は穏やかではなかった。


何も知らない無垢な瞳。
汚れの知らない澄んだ笑顔。


それは、この世界で生きてきた私にはとてもじゃないけど眩し過ぎて、一緒にいたら純粋なミツが汚れてしまう気がして。


素直に笑い掛けられない自分がいた。




< 45 / 74 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop