Soft Luck ―ファンタが街にやってきた―
わたしは、母には恋の終わりを気づかれたくなかった。面白がっても決して同情などあの人はしない。
母は、わたしが久志と付き合い始めてからしょっちゅう遅く帰ってきても、短大に入って外泊するようになってからも何にも言わなかった。
そしてまるで女友達の内緒話を引き出そうとするかのように、わくわくした顔で
「話してよ、何か素敵な出来事あった?」
と言うだけだった。