Monochrome Hands[BL]
父さんはオレが生まれる前に死んだし、母さんは三年前までハルカミに住んでいたけれど、

病気になってカナシモに移住した。この街で病気を治そうとしても、

まともな治療も受けられないからだ。移住する時、オレも一緒に来ないかと言われた。

でもオレは拒んだ。今は昔と違って、会いに行こうと思えば会いに行けるし、

この場所を離れるのは嫌だったから。それに母さんが病気になって一つ叶えたい願望も出来た。

治安がすっかり悪くなったこの街を、栄えさせたいと言う願望だ。

栄えていた頃だったならば、母さんも移住する事なくこの街で病気を治せたから。

その為にはですっかり溢れかえってしまった悪党集団を全て潰さなければならない。

だから小さな所は単独で潰しに行ったり、大きな所は抗争に集団の用心棒として入った事もあった。

もちろん用心棒として入った集団も後から潰すつもりではあるが。

そこで得た金で生計を立てて生きてきた。


しかしこの目的を持つきっかけとなったその母さんも、半年前に亡くなった。

だから再び栄えさせるという本来の目的を忘れて、

ただ自分が生き残る為に悪党集団を潰しだす日々がそこから始まった。

もうどうでも良かったのだ。全ての悪党集団を潰し、活気が戻ったとしても。

一番に戻って来て欲しい人はもう戻って来ないのだから。
< 2 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop