偽恋愛=ギレンアイ=
『ハァ、ハァ…ゲホッ』


よく考えてみろ――。
俺、バカ?


教室、まだいるか?
確信は?

いや、行く価値はある――。



「幹、帰ろ。」
――ガタッ。
ドアを開けようと上げた手を、下ろす。
居た――。

「……うん。」
幹の声が俺の頭を通る。
この声が俺に向かってかけられなくなって、もう何日も経つ。
「あ、あの転校生はいいの?」
・・・稲葉陸だ。
「…あいつ、女嫌い。」
洸の声が、小さく聞こえた。
そうだ、稲葉の親友だった。
女嫌いなのに――幹と…?
「そっ…『ちょ、ちょっと待った!』
稲葉がいきなり大声を出す。
『俺も一緒に帰ってええか?』
「あなたがいいならあたしは別に。」
なんなんだ。この会話。
なんか…いろいろおかしくないか。
「陸。いいのか?」
『おう!』
「…そっか。じゃ、帰ろか。」 
・・・洸、今の俺には、お前と話をする事が、まだできねぇわ・・・。




俺は、まだ話している途中の3人の声を背に、
虚し過ぎるくらい、トボトボと離れていってた。
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