gently〜時間をおいかけて〜
痩せこけた頬。

血が通っていないような、青白い顔。

何も見えていないようなうつろな目。

ボサボサの黒い髪。

それが、母親になった莢の姿かと思うと笑えなかった。

むしろ、かわいそうと思った方が正しい。

枯れ木かと思うくらいに折れそうな細い腕は、もちろん白を通り越して青白かった。

猫背になった背中は、人生の全てに絶望したと言っているように思えた。

あれが俺の目の前にいる莢の何年か先の姿かと思ったら、背筋がゾッとした。

ゾッとして、躰が凍りついてしまいそうになる。
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