ひざまくらの後は?
どうやらさっきの一件で俺もまた落とし物をしていたらしい。


「あぁ、ありがとうございます。助かりました」


そう言いながら定期入れを受けとると、その女の人が顔をあげる。

ようやく見えた彼女の顔は、やっぱりさっき荷物を拾っていた人だった。


「いいえ、落とされたのが見えたので間に合ってよかったです」


さっきまで息を切らせていたのに、まるでなんでもないことのようにふわりと笑った表情を思わず見いってしまう。


大きな瞳を細めて無邪気な顔で微笑む彼女の顔に、髪が少しかかっているのを見て、

なせだか無意識のうちに手をだしていた。



気になったのは確かだ。

髪が一束頬の横をすべり落ちるのが、くすぐったくないのかと気にはなった。


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