さくら木一本道


明らさまな八つ当たりだ、勇次もそれを分かっていた。



(さくら)「悪かったじゃないのよ…‼ ……悪かったじゃないの…」



(勇次)「……」



(さくら)「……アンタは悪くないの…」



さくら自信もこれが八つ当たりということには気付いていた。



(さくら)「……アンタは悪くない… 勇次は悪い事なんてないの… 悪いのは私よ…」



(勇次)「……」



(さくら)「これが八つ当たりだって分かってたでしょ」



(勇次)「……ああ…」



(さくら)「お人好し…」



(勇次)「うるせぇ…」



さくらはまだ机にうつ伏せたまま、さらに肩を落とした。



(さくら)「はぁ… やっと帰れると思ったのになー…」



その時、「グスッ…」とさくらから鼻をすする声が聞こえた。

顔を隠しているから分からないが、勇次にはさくらが泣いているように聞こえたのだ。



(勇次)「おい…大丈夫か…? …そうだ‼ コンビニで何か買ってきてやろうか? おごってやるよ」



勇次なりに気を使った言葉だったのだが、さくらに「うっさい…」と一蹴された。

そして、今日の朝も勇次はさくらに気ばかり使っていた。




「大丈夫か? どこか悪いか?」

「ちゃんと寝られたか? 飯は食えるか?」

「バイト行けるか? 一人で大丈夫か?」



さくらだって子供ではないのだから、そこまで気にする必要はないと思うのだが、そうでもしなきゃ心配で仕方ないようだ。

さくらもそんな勇次の思いを知ってはいるが、気を使われてる感が鬱陶しくて、聞かれる度にキツく言い返していた。



「大丈夫か?」

「別に大丈夫よ‼」



「ちゃんと寝られたか?」

「そんなのアンタには関係ないでしょ‼」



「一人で大丈夫か?」

「子供じゃないんだからほっといてよ‼ いいからさっさと学校に行け‼」

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