さくら木一本道
(勇次)「…まぁいいか、さくら、部屋は二階に親父の部屋が空いてるからそこを使え」
(さくら)「お父さんはどうするの?」
(さくら)「親父はあそこだ…」
勇次は仏壇を指差した。
(さくら)「……ごめん」
(勇次)「別にいいさ、俺が小さい頃に死んでるからな、親父の記憶無いし… そんなことより飯と風呂の準備しねぇと…」
(さくら)「え? 夕御飯ってアンタが作るの?」
(勇次)「母ちゃんと婆ちゃんの帰りが遅い時はな、そこそこスキルあるぜ?」
(さくら)「なに作るのよ?」
(勇次)「米と鶏肉と卵が余ってるから… 簡単にオムライスとサラダ作っときゃ良いだろ」
(さくら)「じゃあ私も手伝うわ、何もしないのは気が引けるし…」
(勇次)「……お前料理出来んの…?」
(さくら)「バカにしないでよ!! こう見えても家庭科の評価は3よ!!」
(勇次)「3て… また微妙な… まぁ普通って事だな。じゃあこの卵割っててくれ、全部割って良いぞ」
冷蔵庫から卵を取り出し、さくらに渡した。
(さくら)「ボールはどこ? あと卵の匂い消すために白ワインかカレー粉があればいいんだけど…」
(勇次)「お、けっこうスキルあるじゃねぇか、何でお前が家庭か」
(さくら)「フン!!!」
‐ベチャ!!‐
(勇次)「……」
勇児が振り返った時には、卵は台所に飛び散っていた。
(勇次)「オイ… 卵に何をした…」
(さくら)「り、力んだのよ…」
さくらの手には、ベットリと卵白と黄身が糸を引いていた。
(勇次)「意味わかんねぇ!! 何で!?何で卵を叩きつける!!?」
(さくら)「しょうがないじゃない!! 中途半端に割るのが苦手なんだから!!」
(勇次)「に、苦手って…」
勇次はさくらの「家庭科 3」の理由が分かった気がした。
(勇次)「もういい!! 卵は俺が割る!! 他の事は出来るな!?」
(さくら)「バカにしないでよ!!」
(勇次)「その言葉2回目だぞ? なんか信用出来ないんですけど…」