さくら木一本道
(さくら)「どういうこと?」
(勇次)「さあな…俺にもわからん… だけど兄貴はその言葉どうり、今は田村家の大黒柱だ」
そう、その通り、誠雪は幼い頃の約束を律儀に守り、高校にも入学せず働いたのだ。
そのお陰で田村家の収入は安定し、勇次を難なく高校に通わせる事が出来た。
全くもって大した兄貴である。
(さくら)「……話聞いてる限りアンタだけ田村家の役に立ってないわね」
(勇次)「え?」
(さくら)「だって誠雪さんは中卒から働いてるでしょ? 鏡子さんもお婆ちゃんも働いてるでしょ?、アンタは時々「飯作り」「皿洗い」「風呂掃除」「薪割り」…バイトとかしないの?」
さくらの言葉が勇次の心にグサグサと突き刺さる。
(勇次)「うっ、うるせー!! 俺にはやりたい事がねぇんだよ!! だから金を稼ぐ意味もねぇし… お前だって見るからに絶対バイトとかしてねぇだろ!!!」
(さくら)「うっ…」
(勇次)「どうせ、家の手伝いもあまりやってないんじゃねぇの!?」
勇次の言葉がさくらの心にグサグサと突き刺さる。
(さくら)「うっ、うるさい!! 私だってやりたい事ないんだもん!! お金なんて親からの小遣いで足りるし!!!」
(勇次)「家の手伝いは?」
(さくら)「うっ、うるさい…」
(勇次)「結局、お前は何もしてな…」
(さくら)「ふんふ!!!!」
‐ドカッ!!!‐
さくらは勇次の「ミゾオチ」に、見事な右ストレートを叩き込んだ。
(勇次)「で、でる… 出ちゃうよ~… それは…」
(さくら)「バカ!!!! 一生そこでのたうち回ってろ!!」
言葉を吐き捨て、ドカドカとさくらは居間に戻っていった。
(勇次)「オェ…まだ吐きそうだ…クソッ…あの女ぁ~…」
勇次は吐き気をおこしながらも皿洗いを始め、しばらくミゾオチの調子を整えていると、また先のセピア色した記憶が頭に浮かんできた。
(勇次)「……結局何だったんだろうな… あの記憶…」