さくら木一本道

二人は声を揃え、さくらが持っている紙袋を見ると、

紙袋が駐車場にある観葉樹の枝に引っかかって破け、破けたところから何かがパサッと落ちた。

それを見届けたと同時に、勇次の視界は物凄い痛快音と、一瞬の激痛と共に暗闇と化した。

そして、記憶もそこで途絶えてしまった。








(勇次)「はッ!!」



暗闇から勇次が目を覚ますと、目の前に見慣れた天井があった。



(勇次)「俺ん…家? だよな…(鼻声)」



起きて周りを見渡すと、見慣れた部屋に見慣れたつけっぱなしのテレビ、間違いなく田村家のリビングだ。



(勇次)「やっぱ俺ん家だ… おかしいな… さっきまでイヲンに居たはずなのに…(鼻声)」



勇次は鼻への妙な違和感を感じ、手で触ってみると、鼻に何かが詰まっている事に気がついた。

そこへ手をあててみると、ティッシュらしき物が詰まっている。

しかも、片方だけでなく両方の穴に、



(勇次)「どうりで鼻声になるわけだ…」



勇次は、そのティッシュらしき物を鼻から抜いた。

すると、鼻の中で熱い液体がたれてくるのが分かった、

紛れもない鼻血だ。



(勇次)「おお、止まらねぇ、ティッシュティッシュ」



勇次は急いで新しいティッシュを鼻に詰め、それと同時に障子が開く音が鳴る。



(さくら)「あ、勇次起きた?」



開いた障子から出てきたのはさくらだった。



(勇次)「さくら?」



(さくら)「はー…良かった、アンタ、イヲンの入口でコケて気絶したの覚えてる?」



(勇次)「イヲン…そうだテメェ!! あの時何でヴェネーマムつっただけで殴りやがっ……は?」





…あれ?
俺の記憶と違う…





(勇次)「……コケて気絶…?俺が?」



(さくら)「アンタ以外に誰がいるのよ、それにヴェネーマムって何?」



(勇次)「……え?」



さくらは薄気味悪いほどニコニコしている。



(勇次)「……んな馬鹿な…」



おかしい…
絶対おかしい…



勇次が頭を抱えていると、テレビから気になるフレーズを流すCMが聞こえてきた。


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