この涙が枯れるまで


今年の8月5日。
僕は疑ったんだ。

8月5日は百合と水族館に行った日だ。
そんな事あるわけない。
でも、確かな証拠があったんだ。


写真に写ってる百合と、水族館の百合が着ていた服が同じだったんだ。

帰り道、滝川先輩に会った事を思い出す。

《そのうち真実が分かる》

この言葉が的中してしまったんだ。


僕は何も見なかった事にした。
信じたくない、とひどく拒む自分がいるからだ。

アルバムを元あったベットの下に隠した。

そしてまだ寝ている百合を見たんだ。


僕は落ちていた指輪を百合の左手にはめた。



今思えばこの指輪は百合の指には大き過ぎた気がする。

この指輪は百合には合わないのかな。


百合は昨日本当に幸せでしたか?



この日から僕は百合の事を疑い始めた。


本当は疑いたくはなかった。


でもね、百合…君は嘘が下手すぎる。


上手とか下手とか、そんなの関係ないんだけど、

百合…僕は君のなんだったの?



僕は君の一番にはなれないの?



ねぇ…答えてよ。



百合が寝がえりをうつ。



百合は寝言を言ったんだ。


それは僕の名前ではなかった。


確かに百合はこう言った。


直。




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