この涙が枯れるまで


―時は過ぎ、冬休みが終わった。


僕は学校で百合をみるとまだあの感覚で襲われるんだ。
あの百合を見た時と同じ感覚。


ドクン…ドクン…


僕は何も変わっていなかった。
弾む心臓も、赤くなる頬も。


毎日この感情を抑えた。
誰にもバレないように必死に…。



でも歩や沙紀にはバレてしまうんだ。


『優…後悔してるんじゃねぇの?』


『後悔?』


『優はまだ百合を好きなんじゃねぇの?』


『俺が?んな訳ないだろ。俺もうあいつに呆れたんだ』


『でも体は正直だろ?』



確かにそうだった。
百合を見る度僕の鼓動は動きだす。
僕は百合が好きだった。
嘘をつかれても、ひどい事をされても,
僕は百合が好きで仕方がなかった。


『優の顔を見てるとさ…あの頃と変わらねぇんだよ。』


『あの頃?』


『そう。あの頃。入学したばっかりの時。優が百合を見つめてる時と変わらねぇもん』



自分では分からなかった…
僕は変わっていなかったんだ。
僕は自分では変わったと思ってた。
でも変わってなかったんだ。


『歩…やめてくれ、もう百合を思い出したくない…』

『百合がまだ好きなんだろ? 毎日百合を思い出してるんじゃねぇの?』


『…………』


『おい!!優!!!』



『………俺は百合を好きじゃないんだ…』




< 79 / 419 >

この作品をシェア

pagetop