蜃気楼。

「ごめん。ちょっと熱くなっちゃった。」


荒げた声に恥ずかしさを覚えたらしいモエは、

ほんの少し乱れていたスカートの裾を直し、

また私の隣に座った。


私達の間に、広がる沈黙。

先に沈黙を破ったのは、モエ。


「…分かってると思うけど、

この話…サユリには聞いたって言わないで…。」


「………。」


あえてこたえない。


「もう…サユリが傷付くトコロ…見たくないッ。」


「分かってる。」


今にも泣き出しそうに、肩を震わせるモエに仕方無く返す。


「ありがとうって、どこ行くの?」



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