溺愛キング
バタンッ――――………

ドアが閉まった後も外から尚弥の声が聞こえてくる。
尚弥は矢耶のことになるとうるさい。だから、南が分かるやつでよかったと、心の中で安堵した。

けど後で何て言われるか…

尚弥より南は、たちわるいから。後が怖いな。

苦笑いしかできねぇな。


「尚弥…………」


振り返ると、矢耶は閉まったドアを見つめていた。

そんな、名残惜しそうに愛おしそうに、尚弥の名前なんか呼ぶな。


「藍……尚弥にあんな言い方しなくてもいいのに。」

『なんだよ。なんで尚弥の味方するんだよ。』


くるっと後ろを向き矢耶をこちらに向かす。


「味方とかじゃなくて、今のは藍が悪いもん。尚弥は心配してくれたのに。」


ぷいっと顔を背けた。

そんな矢耶の頬を手で撫でながら


『分かってる。分かってるけど、無理なんだよ。頼むから分かってくれよ。』


撫でていた手を離し、矢耶の指に自分の指を絡め、ソファーに座った。

矢耶は立ったままだけど俺と目線は同じくらい。

矢耶は眉毛を下げたまま俺を見つめる。


『確かに、俺のやってること理不尽だけど、仕方ねぇーじゃん。矢耶のことしか頭にねぇーもん。』

「あ、藍。」

『なんであんな風に言ったんだろうな。自分でも意味分かんねぇよ。矢耶を泣かしてるっていうのにさ。』

言い出したら止まんねぇ。
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