約束
(…どうして…龍司はいつも…俺の欲しい言葉をくれるんだろう…)

俺の隣を歩く龍司をチラッと見て俺は思った。そんな俺たちに

「なんか訳ありみたいだな?」

小さく溜め息をつき心配そうに和也が言った。

「ああ…まぁな。」

龍司は曖昧に答え

「…俺たちには言えないよな…会ったばっかだし…」

寂しそうに陽介が聞き返した。

「…そんなことないよ…ただ、ここではちょっと…な。」

少し複雑な表情で龍司が言い

「あっ!見えてきたぞ!あの家だ!」

目の前に見えた一軒家を指差して和也と陽介に向かって叫んだ。

「「……」」

龍司の指差す方を見て2人は大きく口を開き驚いたまま見ていた。

「…これ…なに?」
「なにって…家だけど?」

唖然としながら問いかける陽介に対し龍司はあっさりと返した。

「それは見ればわかるよ!」

ムキになって陽介が言い返す。そんな陽介を

「まぁまぁ、落ち着け陽介。」

肩を叩き和也が宥めたが…。

「お前に…これを見てなんで驚いてないんだよ…」

呆れながら和也に言い返した。そのやり取りに俺は入っていけずただ黙っていた。

「…いや、これでも驚いてるんだけど…」

頭を抱えながら和也は答えた。そして、俺はゆっくりと先を歩き

「ここはさ、小さい頃に俺が家を飛び出した時に龍司と2人で見つけた場所なんだ。誰も知らない…俺たちだけの秘密の家…。」

静かにあの頃を思い出して2人に伝える。
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