約束
そんなお互いの気持ちを噛み締めていると突然、ドアが開き

「皐!龍司!」

大声で俺たちを呼び由岐が入ってきた。

「由岐?」
「…やっぱり…ここにいた…」

息を切らし呼吸を調えながら由岐が言うが俺たちは、意外な人物に驚いていた。

「由岐…なんで?」
「は?」
「お前、家に帰ったんじゃ…」

俺と龍司の言葉に由岐は

「ばっかやろ〜、あんな龍司をほっとけるわけないだろ!第一、俺のせいでもあるしな…」

そう言って由岐は、俺たちを抱き締め

「…ごめんな…俺の一言でお前らを不安にさせて…」

辛く優しい声で俺たちに謝罪した。

「「……」」

そんな由岐を俺たちは、ただ無言で抱き締め返した。そして

「いや…由岐は、悪くないから。それに由岐の言ったことは、間違ってない。」「龍…司?」
「ただ、俺たちがお互いを大切にし過ぎて考えようとしなかっただけ…この先もずっと変わらずそばにいるんだって思ってたから…」「……」

そんな俺たちに由岐は、なぜか悲しい目で見ていた。

「「由岐?」」
「…いや…なんかお前らが羨ましくてな…」
「え?」
「うーん…俺にもいたんだよ…大切な幼馴染みがさ…」
「「……」」
「まぁ…いろいろあって今は、もういないけどな…」

その目は、どこか悲しそうだった。由岐の表情や言葉の意味を俺たちは、すぐに察し何も言わず強く抱き締めた。

(由岐も大切な人を失ってたんだな)

「皐…龍司…?」
「俺たちは、変わらない気がするよ…」
「「……」」

俺の言葉に一瞬、龍司たちは、驚いていたがすぐに表情が変わり笑いだした。
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