月光御伽
頭に直接響く声に
私は振り返った。
─出せ…。ここから出せ。
声が大きく響く度に
お社の光は強くなった。
足はいつのまにか
お社の扉の前に辿り着いていた。
『そこに居るのね?』
目の前に居るのは
得体の知れない異質な者なのに
思考は落ち着き私は冷静に問い掛けた。
『出られないの?ここから、出たいの?』
扉に手をそっと触れた。
筈だった。
『…は。えっ!?』
筈だった。けれど
手は扉をすり抜けて
それに引き込まれるように
体も扉に埋まっていった。
『うっ、そ───…』