漆黒の姫君
「―――私、500年前の世界から来たの」


「ご・・・500年前・・・?」


「そうよ。貴方も、私の格好を見て、気付かなかったの?」


そういえば、アリスが身に着けていた服は、レースの付いた水色のドレス。


どう考えても、今現在、女子高生が着るような服装ではなかった。


そして、あの怪我。


「・・・確かに・・・今の物とは思えなかった」


俊介が、思いつめた様に言った。


「しかも、来たのは日本。私がいたのは、500年前のイギリスのハズなのよ」



「イギリス・・・!」


「そう。私と母は、大きな魔力を持つ者として・・・。魔道士の活動拠点、『Pandora』に拉致られた」


「拉致・・・?俺、結構前に、其処の名前を聞いたことがある」


ソラが、ハッとして言った。


ソラも、魔力を使える、魔道士だと言っていた。


「―――私の母は、其処で亡くなったわ」


アリスは、重い口調で言った。一瞬だが、悲しそうな顔をして・・・。


『恐らく、アリスは昔からこの性格ではなかったのであろう。

母が殺され、閉じ込められ・・・。

その時から、彼女の人生が、狂い始めたんだ―――』


俊介は、そう、推測した。


「私に思い出なんて、ないの。幼い頃の記憶が消えてしまってる。唯一残っている物といえば・・・歌だけ」


「歌?」


「この曲よ」


アリスが胸元から取り出したもの。


それは、銀色をした、時計だった。


「コレ、オルゴールになってる」


ソラが、時計のカバーを開いて言った。


「すごいね」


「この曲だけが・・・私の思い出」


アリスの顔が、曇ってゆく。


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