銀杏ララバイ
「いや、おばあさまは遠くにいる。
さっき話したとおりだよ。
ここは私だけが住んでいる。
いろいろな世話は近くにいる侍女がしてくれるが、
邪魔にはならない。」
それまでは、憧憬の念を含んだような
楽しそうな話し方だったが、
家族の話になると
ギナマの話し方は感情の無い、
ただ聞かれたから話すと言う様子に変わっている。
そんなギナマに違和感を抱いたかおるだが、
次に出す言葉は決まっていた。
「そう。夕食、ご馳走様。
私たち、これで失礼します。
孝史、行くわよ。」
そのかおるの言葉で…
ギナマと孝史が一様に驚いた顔をした。
多分二人にとっては想定外の言葉だったのだろう。
「お姉ちゃん… 」
孝史は言葉には出さなかったが、
いや、出せなかったが、
外はもう暗いから
今晩はここに泊めてもらおうよ、
と言う顔をしている。
他の家ならそんな事は思わないだろうが、
ここは自分たちと共通の楽しい思い出を持っている、ギナマの家、
感情的には親戚のような家だ。
それに一人で住んでいる、と強調しているから、
頼めば泊めてくれそうだ。
それよりも、
せっかく会えたのだからもっと話がしたい、
とも言っている。
「私は… あんな所で夜を過ごすなら、
ここで泊まってほしい。
いつまででも飽きるまでここにいて欲しい。
私はこうして来てくれてとても嬉しい。
私もすることがあるから干渉はしない。
こうして食事をしながら話をしたい。
一人は寂しい。」
ギナマは真剣な顔をして、
かおるを見ながら言葉を出している。
あの澄んだ瞳を真っ直ぐにかおるに向け、
最後には、一人は寂しい、とまで言った。