銀杏ララバイ
どうやら壁を抜けると階段になっているらしい。
やはり地下室だ。
そして気づけば、壁が元通りになっている。
「お姉ちゃん、見た。
あいつ僕たちに気づかなかった。」
「ええ、よほど急いでいたみたいね。
これで開け方は分かった。
3回、2回よ。行ってみる。怖くない。」
「怖くなんか無い。
何があるのか見てやる。
ギナマの家なのに
他の奴に勝手にされていたのでは可愛そうだ。
見てから警察に知らせてやる。」
あくまでも孝史は
ギナマを信じているような口ぶりで、
ギナマのために悪い奴を追い出すつもりだ。
かおるはそんな孝史を複雑な気持ちで見ている.
「何だかすごく広いね。
地下なのに他所の町に来てしまったような感じだ。」
孝史が不安そうな声を出した。
「そうねえ。一体どうなっているのかしら。
何だか不気味だから戻りましょうか。
人の気配もないし… 」
地下に下りるまでは簡単だった。
しかし階段を下りた後は
廊下ならぬ通路があるだけで、
二人は慎重な足取りで進んでいるのだが、
人が入って行ったのは見ているのに、
誰にも会わない。
それどころか、
何だか同じような景色の所をぐるぐる回っているような気もしている。
かおるは夢の中にいるような気分になり、
その内に,逃げても逃げても逃げられない嫌な夢に襲われそうで…
陰気な気分になっている。
戻るなら今のうちかも知れない。
「うん… でももう少し行って見ようよ。
あ、向こうで音がしている。
喧嘩しているのかなあ。」
孝史がそう言った時だった。
なるほど、前方で不確かな金属音が響いている。