ごく当たり前の日常から
「さてと、洗濯物を干さなくちゃね」


スッ…と、立ち上がりかけた時に、お母さんに背後から声をかけられた。


「…由紀乃」


「なぁに、お母さん」

くるりと振り向くと、何か言いたそうな表情をした、お母さんの姿があった。


「その……再婚は、考えてないのかい?」


重い口を開いた言葉に、私は驚いた。
突然、何を言い出すのかと思えば…そんなことか。


私は、深い溜め息を吐き出すと、ゆっくりと言い聞かせた。


「あのね、お母さん…。私は再婚なんて一切、考えてませんからね」


「…気持ちも分かるけど、夏美も…まだ高校生になったばかりだし…ホラ、色々と大変だろう?」


確かに、それは分かっている。
娘も、気にしているのか…高校入学したと同時に、本屋で軽いアルバイトを始めた。

最初は、反対はしたが…全く首を縦に振らずに、「自分のお小遣いが欲しいだけだから」と言っていたけど…本当は違うのは知っている。


私達に迷惑かけさせたくないと、こっそり貯金をして、高校を卒業したら…この家から、きっと出て行くんだろう。


この間、夏美の部屋を掃除していたら、机の上に賃貸物件の雑誌があることを発見して、それを見て私は悟ったのだ。
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