こんな僕たち私たち
1章-5<肩書きと、お守り>
足が震える。

足だけじゃなく、手も、肩も。

せめて声だけはと願いながら、私は口を開いた。

「やめて下さい先輩。そういうのは…お互いの同意があってするものです」

駄目だ、震えた。

黒岩先輩は私を睨んで、口の中で何か呟きながらようやく七緒から離れた。よく聞こえなかったけどいい意味の言葉であるはずがない。

「心都、何してんの?」

心底不思議、という感じの七緒の顔が私を見つめる。

悪いけど答えられません。

「あんた誰?」

私を睨んだままの先輩が刺々しく言った。そのあまりの迫力に思わず喉がごくりと鳴る。

「…2年の杉崎です」

「杉崎ぃ?聞いたことねぇな」
ねぇな、ですか。さっきまでの甲高い声はどこへやら、先輩はすっかり人が変わっている。

「邪魔してくれちゃって、何のつもり?まさかあんた東君の彼女か何か?」

「そんなんじゃないです!」

「じゃあ何だっつんだよ」

言葉に詰まる。

答えがわからないわけじゃないのに。
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