こんな僕たち私たち
2章-4<告白と、続くサバイバル>
案の定、先にキレたのは進藤だった。

盛大な舌打ちの後、今まで少年の胸元にあった右手を思いっきり振るう。

「……!」

止めようと駆け寄るその一瞬の間に、私は3つの事を考えた。

『立場逆だけど前にもあったなこんな場面』

『七緒のためなら歯の1本や2本!』

『…でも前歯は嫌』

そして。

結果的に、私の助けは必要なかった。

柔道で鍛えた反射神経で、七緒はすんでのところで進藤の手首を掴んだのだ。

――あぁ心臓に悪い。

私は中途半端な割り込み未遂の格好のまま、ホッと息をついた。

「……っ」

苛立たしげに腕を振り払おうとする進藤。

だけど七緒はその手を離さず。

「――お前」

私はてっきり、七緒が1発説教でもぶちかますのかと思った。

でも、違った。

「本当は判ってるんだろ」

何を。

七緒は怒っているようでもなく、波立ちのない口調でそれだけ言うと、あとは静かに進藤の目を見ていた。

いつも思う。

こういう真剣な時の七緒の目はとても強くて、絶対に逸らせないんだ。

14年間で一度も、私はこの目から逃げられた事がない。

そして、それはどうやら進藤にとっても同じらしく。

それ以上七緒の手を振り払おうとはせずに、ただその視線を受けとめる。

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