こんな僕たち私たち
「あ、ちょっと…っ」

 私と七緒は、しばし呆然。

「……」

「…あーあ、泣かした」

















 同性まで虜にしてしまうほど愛らしい東七緒君は、当然ながらエプロンもよく似合う。

 それが私のお母さん用のあの無駄にごてごてと飾り立てられているものなら、尚更。

「…ありえねぇ」

 禄朗の告白から数十分後、私の家の台所にて。

 ピンクなフリルを摘んだ七緒の一言に、今の気持ちが全部凝縮されている。

「しょうがないでしょー。うちにはそういう系のエプロンしかないんだもん。私だって我慢してんだから、七緒も頑張って着てよ」

 いつもの彼なら怒濤の勢いで拒否しているであろうそのエプロンを、七緒は溜め息1つ吐くと諦めて着た。

「七緒、かーわいーい」

「うっせー」

 本来の持ち主であるお母さんは買い物かどこかに出掛けているらしく、家には誰もいない。早い話が今、私にとって「好きなあの子と2人きり☆」という非常にオイシイ状況なわけなんだけれど。出会って14年もたつ相手だからか、緊張感も何もあったもんじゃない。

 料理の基本っていえばまずこれでしょー、という私の安易な考えから始まった林檎の皮剥きに2人並んで取り組むだけだ。

 七緒はぼーっと両手を動かしていた。

「七緒、手ェ危ないっ」

「おわ」

 間一髪、包丁は七緒の指に触れずに止まった。

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