渇望-gentle heart-
百合は今まで、あの街で、ホテヘル嬢として、体を売って生きてきた。


初めてそれを聞いた時は、やっぱりショックの方が大きかったけど。


でもさ、人が汚れることには理由があって、悲しい過去を背負っている百合を、軽蔑しようとは思わなかった。


ホストの俺はさ、心を売ってたから。


だってそれは、割り切って体を売る百合なんかよりずっと、汚いことなんだから。


百合はさ、他人に対して優しすぎるんだよ。


拭えない情の狭間で苦しんで、ホントは人一倍相手を思ってて、だからこの世界で生きることが大変なんだよな。


決して弱さを見せないけれど、それは強いからじゃない。


泣けば楽になれる夜だってあるし、時に吐き出すことで自分の中に溜まったものを消化できることだってあるのにさ。


お前はさぁ、笑っちゃうくらいに生きるのが下手な女だもんな。


瑠衣ってヤツを憎んでないと言えば嘘になるのかもしれないし、それは嫉妬に近いものだとも思う。


でも、百合が大切だと思ってた人を悪く言いたくはないんだ。


何ひとつ見ようとしなかったお前が、あの街で、唯一心を揺らし続けてた人だから。


だから、忘れろ、なんてことを言うつもりはないよ。


俺を見てほしい、なんてことも言わない。


けどさ、絶対ちゃんと、例え何があったとしても、俺はいつも傍にいてやるから、って。






大丈夫だよ。


俺とお前なら
きっと大丈夫だからさ。







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